はじめまして!
このブログを運営している、薬剤師のわたあめです!
「妊娠したかもしれない」「妊娠に気づく前に風邪薬や頭痛薬を飲んでしまったけれど、赤ちゃんに影響はないだろうか?」などと、不安になっている方はいらっしゃらないでしょうか。妊娠中にお薬を服用することに不安や疑問を持つ方は多いと思います。ネットでも「妊娠中に〇〇薬は注意」などの情報が沢山出回っています。
妊娠中の薬の服用は、確かに慎重になるべきことです。どうしてかというと、お母さんが飲んだ薬の成分は胎盤を通して胎児の血液中に入り、胎児は身体が未熟で薬を十分に排泄できないため、奇形や発達障害などの恐れが生じる可能性があるからです。
しかし、まず知っていただきたい大切な事実があります。
「妊娠したことに気がつかないで薬を飲んでしまった」というのは、実はよくあることなのです。そして、ほとんどの場合、薬の影響を過度に心配する必要はないと言われています。たとえば、市販薬を通常の範囲で短期間使用した程度であれば、赤ちゃんの発育に影響する可能性は極めて低いと考えられていて、妊娠中絶などを考慮する必要はない、という見解もあります。
ただし、「大丈夫だろう」と自己判断で済ませてしまうのは絶対に避けてください。大切なのは、飲んだ薬の情報を持って、すぐに専門家(産婦人科医、薬剤師、情報センター)に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
この記事では、薬剤師として、妊娠初期に薬が赤ちゃんに与える影響の仕組みから、具体的に「今すぐ何をすべきか」までを、分かりやすく丁寧にご説明します。正しい知識で、おなかの赤ちゃんを守るためのきっかけになれたらと思い作成しました。
*本記事は、薬剤師としての知見と、公的な情報源および信頼性の高い情報に基づいて作成しています。記事の内容は、医学的診断や治療の代替となるものではありません。
薬がおなかの赤ちゃんに影響しやすい時期は?
妊娠中の薬の影響は、服用した時期(妊娠週数)によってリスクが大きく異なります。妊娠週数は、最終月経の開始日を「0週0日」として計算します。
妊娠超初期(0〜3週末)の服用について:「全か無か」の時期
この時期は、最終月経の開始日から受精、着床するころで、まだ妊娠が判明する前であることがほとんどです。
この時期に飲んだ薬が赤ちゃんに影響することはないと言われています。この時期は「全か無か(All or None)」の時期と呼ばれていて、もし薬の影響で受精卵に重篤なダメージがあれば、妊娠そのものが成立しなかったり、ごく早い段階で流産したりすると考えられています。
つまり、もしこの時期に薬を飲んでいたとしても、妊娠が継続できているのであれば、薬が原因で形態異常(奇形)が起こる可能性は低いと考えられます。ただし、いくつか注意しなくてはならないお薬があります。代表的なお薬として、エトレチナート(角化症治療薬)やリバビリン(抗ウイルス薬)といった、残留性(体内に残りやすい)の高い薬については、その成分が体内に残ったまま妊娠4週以降に入る可能性があるため注意が必要であると言われています。
妊娠4週〜7週末の服用について:最も重要な「絶対過敏期」
多くのママが妊娠に気づき始める時期です。この期間は、赤ちゃんの中枢神経(脳・脊髄)心臓、四肢、目、耳などの主要な器官がつくられる最も大切な期間であり、「器官形成期」または「絶対過敏期」と呼ばれます。
この時期に薬の影響を受けると、細胞分裂が正常に行われず、赤ちゃんにも形態異常が起こるリスクが生じます。このため、薬の服用に最も慎重になるべき時期です。市販薬を通常の範囲で短期間使用した程度であれば問題ないことが多いものの、妊娠判明後は薬の使用は極めて慎重に行う必要があります。
妊娠8週〜15週末の服用について:「相対過敏期」の注意点
重要な器官の形成は終わりに近づきますが、口蓋や性器などが形成されている時期であり、引き続き薬の服用には慎重さが求められます。この時期は「相対過敏期」や「比較過敏期」と呼ばれます。
妊娠中期以降(16週以降)の服用について:「胎児毒性」に注意
妊娠5カ月(16週)に入ると、薬が原因で形態異常や障害を起こす催奇形性の心配は無くなります。
しかし、この時期からは「胎児毒性」に注意が必要です。胎児毒性とは、薬が赤ちゃんの機能や発達に影響を与えることです。特に、解熱鎮痛薬として使われるNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は、赤ちゃんの心臓にある動脈管を収縮させる作用があり、妊娠28週以降(妊娠後期)の服用は原則として禁忌とされています。これにより、肺高血圧症や羊水過少症などの重篤な影響を及ぼすリスクがあるため、絶対に避けるべきです。
以前、「妊娠超初期、つらい頭痛に使える鎮痛剤は?」という記事でも説明していますので、よろしければそちらも参考にしていただけると幸いです。
飲んでしまった!パニックになる前に知ってほしい3つの原則
妊娠に気づく前に薬を飲んでしまったとしても、過度に不安になる必要はないと言われています。冷静に現状を把握するための原則を確認しましょう。
原則1:市販薬(少量・短期間)なら、過度に心配しないで
市販の総合感冒薬は、病院で処方される薬と比べて薬の成分量が少なく、効き目がおだやかなものが多いです。そのため、妊娠に気づく前に定められた用法・用量を守って数回服用した程度であれば、赤ちゃんへの影響は極めて低いと考えられています。
ただし、市販薬であっても、長期連用や妊娠末期の服用で問題になる成分があるため、自己判断による服用は避け、必ず専門医に相談してください。
また、湿布薬やステロイドなどの塗り薬、目薬、点鼻薬といった局所薬と呼ばれるものは、使う量も微量で、症状のある部分だけに作用するように作られています。そのため、用法・用量を守った一般的な使い方であれば、体に吸収される量が少なく、赤ちゃんへの心配はほとんど無いといってもいいでしょう。
原則2:妊娠中に比較的安全な薬を知っておく
痛みがひどく、我慢することで母体に大きなストレスがかかる場合は、医師の判断のもとで薬を使用することもあります。
胃薬についても、市販の胃薬は特に影響がないと言われていますが、産婦人科では妊婦さんや胎児に問題のない薬を選んで処方します。
漢方薬については、一般的に安全だと考えられがちですが、中には妊娠中に避けるべき成分が含まれるものもあります。「漢方=安全かつ副作用ゼロ」という誤ったイメージを持たず、必ず漢方に詳しい医師や産婦人科医、あるいは薬剤師に相談が必要です。
こちらの内容についても、以前「妊娠中の風邪、葛根湯は飲んでいい?」という記事にまとめていますので、参考にしていただけたら幸いです。
妊娠中に服用が禁忌とされている薬は多岐にわたりますが、特に身近な薬やサプリメントで注意が必要なものを挙げてみたいと思います。
複合成分の市販薬: 総合感冒薬や複合鎮痛剤の多くは、複数の成分を組み合わせています。これらの中には、妊娠中の安全性が確認されていないものや、カフェイン(過剰摂取は流産や低出生体重児のリスク)、イソプロピルアンチピリン(IPA)(ピリン系成分で安全性データが不十分)など、注意が必要なものが含まれている場合があります。市販薬を選ぶ際は、必ず薬剤師に相談して全成分を確認してください。
ビタミンAサプリメントの過剰摂取: 脂溶性ビタミン(体内に蓄積しやすい)であるビタミンA(特に動物由来のレチノール)を妊娠初期に過剰摂取すると、胎児に蓄積され、奇形を起こすリスクが高くなることが知られています。市販の総合ビタミン薬でもビタミンAが含まれるものは、念のため妊娠4〜7週末は飲むのをやめるか、容量を必ず守りましょう。ビタミンAは必要な栄養素ですが、サプリメントからではなく、食べ物から自然にとるようにすれば安心です。また、イソフラボンを含むサプリメントも、過剰摂取はホルモンバランスを崩し、赤ちゃんの生殖機能に影響を与える可能性が考えられるため注意が必要です。
今すぐ取るべき最善の行動と相談先
妊娠初期に薬を飲んだことに気づいたら、不安になってしまうこともあるかと思います。そんな時は、以下のステップを参考にしてみてください。
ステップ1:飲んだ薬の情報を正確に把握する
専門家から最善のアドバイスをもらうために、以下の情報をメモしておきましょう。
1. 飲んでしまった薬の正確な名前(商品名や成分名)
2. 服用した日付、時間帯、飲んだ量(錠数や期間)
3. 現在の妊娠週数(最終月経開始日などが分かると正確です)。
お薬手帳をお持ちの方は、
お薬手帳にメモをしておくと便利です。基本的に、薬局でお薬をもらった時に
お薬手帳に記録を残してもらっていると思いますが、そのほか最近使った市販薬、
サプリメント、お薬を使って気になったこと、医師や薬剤師に対するコメント等を入れることができます。
ぜひ
お薬手帳を活用していただきたいと強く願います。
ステップ2:専門家にすぐに相談する
この情報を持って、以下の専門機関に相談しましょう。自己判断で大丈夫だと決めつけず、必ず専門家の判断を仰いでください。
• かかりつけの産婦人科医: 赤ちゃんとママの状態、妊娠週数を考慮した上で、適切な判断を下してくれます。当院に通院中の妊婦さんは電話でも相談に応じてくれる病院もあります。
• 薬局またはドラッグストアの薬剤師: 市販薬の成分や安全性について、専門的な知識でアドバイスを提供できます。
• 妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター内): 妊娠・授乳中の服薬に関する専門的な情報提供を行っている機関です。専門の医師・薬剤師が相談に応じてくれます。
持病をお持ちの方へ:自己判断で中断するのは危険
ぜんそくやてんかんなどの持病があり、妊娠前から薬を服用していた方は、自己判断で薬を中断しないでください。急に服用をやめると症状が悪化し、かえって母体と胎児に危険を及ぼすことがあります。
妊娠が判明したらすぐに、持病について担当している主治医と産婦人科医の両方に相談し、連携して安全な治療計画を立ててもらいましょう。情報を正確に伝えるために、お薬手帳が便利です。持病をコントロールすることが、ママの健康と胎児の安全にとって大切です。医師は、飲むことによるデメリットよりも、服用しなかった場合のリスクの方が高いと判断した場合に薬を処方します。処方された薬は、自己判断で量を減らしたり、やめたりしないようにしましょう。
薬に頼りたくない時の妊娠中の不調対策
妊娠中はホルモンバランスの変化や体の変化により、頭痛や便秘といったつらい症状に悩まされやすい時期です。薬を使わずに症状を和らげるセルフケアを試してみましょう。
妊娠中の頭痛対策:温める?冷やす?見極めが肝心
妊娠中の頭痛の原因は、ホルモンバランスの変化、血行不良、睡眠不足、ストレス、脱水など多岐にわたります。頭痛には大きく分けて「緊張型頭痛」と「片頭痛」があり、対処法が異なります。
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頭痛のタイプ
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特徴
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おすすめの対処法
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緊張型頭痛
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頭全体が締め付けられるような痛み。肩こりを伴うことが多い。
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温めるケア(蒸しタオルで首や肩を温める、軽いストレッチ、ぬるめのお風呂)。血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
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ズキズキと脈打つような痛み。吐き気や光・音に敏感になる。
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冷やすケア(冷たいタオルやアイスノンをこめかみや額に当てる、暗く静かな部屋で安静にする)。炎症を抑える効果が期待できます。
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※注意: これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛や、高血圧を伴う頭痛は、妊娠高血圧症候群などの重篤なサインである可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。
妊娠中の便秘対策:生活習慣の見直し
妊娠中はホルモンの影響や、後期には子宮が腸を圧迫することで便秘になりやすいです。
便秘薬の成分がおなかの赤ちゃんに悪影響を与える心配はほとんどといって良いほどありませんが、中には効き目が強すぎて急激な腹痛を伴う薬もあるため、処方については必ず産婦人科医に相談しましょう。
薬に頼る前に、以下の対策を試しましょう。
• 水分補給:こまめに水や麦茶を飲み、脱水を防ぐ。
• 食事:食物繊維の多い食事を摂取し、栄養バランスを整える。
• 運動:体調の良い日はウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かし、血行を促進する。
妊活中の服薬習慣について
妊娠を強く希望している方や、不妊治療を受けている方は、いつ妊娠してもおかしくない状態です。妊活中から、将来の妊娠の可能性を考慮して薬を選ぶ習慣をつけておくことが理想です。妊活中に薬を服用する必要がある場合は、主治医または薬剤師に「妊活中であること」を伝えて相談しましょう。妊娠中でも比較的安全とされるお薬を勧められる場合があります。
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まとめ:妊娠中の薬は自己判断せず専門家に相談を
妊娠初期に薬を飲んでしまった際の不安は計り知れません。しかし、多くのケースで赤ちゃんに大きな影響がない「全か無か」の時期であったり、市販薬であれば影響が極めて低かったりすることが、専門的な見解から分かっています。
私が薬剤師として最も強調したいのは、「妊娠中の薬は、決して自己判断で服用せず、必ず医師や薬剤師に相談すること」です。疑問や不安がある場合は、遠慮しないで産婦人科医に相談し、納得いくまで十分な説明をうけるようにしましょう。
正しい知識を持ち、専門家のアドバイスを求めることが、ママと赤ちゃんの安全を守るための最善の一歩です。不安な気持ちを一人で抱え込まず、専門家を頼ってくださいね。私たちは、あなたの安心できる妊娠生活を心から応援しています。
参考文献
• 妊婦さんに知ってほしい話 | 正しく使う | からだとくすりのはなし | 患者さん・一般の皆さま | 中外製薬株式会社
• 妊活中の服薬について|東京都の妊娠支援ポータルサイト|東京都妊活課
• 薬の服用のよくある質問 | 横浜 産婦人科 乳腺内科【的野ウィメンズクリニック】
• 飲んでもいい?妊娠初期の薬とのつき合い方【医師監修】
• あいち小児保健医療総合センター – 妊娠・授乳と薬
• 中外医学社「妊婦・授乳婦の薬」改訂2版 – 妊婦・授乳婦への薬物療法の基本的考え方
• Eurofins GeneTech – 新型出生前診断
• 薬の適正使用